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第12話

宮崎瑛介は仕方なく濡れたタオルを彼女に渡した。

「真一はもう具体的な方法を教えてくれてるから、ここは私に任せて。瑛介、弥生をしっかり看病するから、安心して」

そう言われると、宮崎瑛介はそこから動かず、死体のように横たわる霧島弥生を一瞥してうなずいた。「うん」

そう言って、彼は部屋を出て行った。

ドアが閉まった。

部屋の中は静かで、しばらくして江口奈々はタオルを再び洗うと、彼女に近づいた。

「弥生、体を拭いてあげましょうか?」

霧島弥生は本当に力がなく、誰かの助けを必要としているが……

「看護師を呼んでもらったら?面倒だから」と彼女は提案した。

江口奈々は優しく笑った。「面倒なんかないわ。看護師よりは行き届くわよ。だた、見られるのを気にしないでね」

彼女がこのように言うのなら、霧島弥生はもう何も言えず、唇をゆるめてうなず苦しかなかった。

彼女が同意したのを見て、江口奈々は近づいて、彼女の服のボタンを外しはじめた。

恥ずかしいと思い、霧島弥生は目を閉じた。そのため、江口奈々がボタンを外す際に彼女のことをじっくり見ていたことに気がつかなかった。

江口奈々は唇を噛み、また、彼女の顔色は良くなかった。

もし彼女が見間違えていなければ、宮崎瑛介は濡れたタオルで彼女の体を拭きたいとでも思っていただろう?

さらに彼女の襟まで広げた。

ふたりの関係はいつこんなにも親密になったのだろう?

もしかして、自分が海外にいる間に何かあったのだろうか?

江口奈々はその美しい眉を軽くひそめて、心の中では少し不安を感じていた。

服を脱がせば分かるが、霧島弥生の体はとても綺麗だ。たとえ横たわっていても、その部分はとても豊かで、肌は純粋な白ではなく、微かなピンク色が混じっていて、みずみずしく見えた。

たとえ女の子であっても、この体は非常に魅力的だと江口奈々はわかった。

彼女は唇を軽く噛み、抑えられなさそうに「実はこの数年間、あなたに感謝しているの」と小声で言った。

霧島弥生は目を閉じていたが、物理的に体を冷やしてもらうのは実に効果的で、液体が体に塗られるととても涼しくて気持ち良かった。

熱はかなり下がった。

彼女は目を開けて、ちょうど江口奈々の美しい瞳に合った。

「私に感謝するって?」

江口奈々は頷いた。「ええ。表から見れば、瑛介があなたと偽の結婚をしてあなたを助けたことになったけど、この2年間、弥生のおかげで、彼からたくさんの女を防いだことを知っているわ。だから、お礼を言いたいの。あなたが居なかったら、私が帰国したとき、彼の周りに面倒な女があふれて、私にとっても大変だったと思うから」

そう言われて、霧島弥生は一瞬呆れた。

彼女はバカではない。その言葉の意味を理解していた。

まずは感謝することで自分の身分を示し、次に宮崎瑛介とは偽の結婚で、彼女に期待しないよう注意喚起した。

自分自身が宮崎瑛介の真の妻になることを示した。

彼女は唇をすぼめて、言葉を失った。

江口奈々はまた彼女の体を拭き、服を整え、彼女を支えながら座らせた。そして優しく問いかけた。「少しよくなった?水を飲みたい?一杯注いであげましょうか?」

霧島弥生はその時本当に喉が渇いたので、「ええ」と答えた。

そこで江口奈々は彼女のために水を一杯注いで持ってきた。

霧島弥生はそれを受け取って飲み干した。

喉が潤った。

彼女は頭を上げて江口奈々を見た。そして、先ほど考えていたことを彼女に伝えた。

「実は宮崎瑛介と私の間に何かあるか心配する必要はないのよ。彼の心にはずっとあなただけがいるの。なにしろ、あなたは彼の命を救った恩人だから、誰もくらべものにならないわ。私もあなたから恩を受けたことあるし、その恩は一生忘れないわ」

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